陶淵明の雑詩陶淵明(365-427)は、今から1600年程前、中国の晋の時代に生まれ、宋の時代に亡くなった李白・杜甫以前の代表的な詩人です。淵明は30才台をはさんでの十数年、役人として職務の奔走した他は、ずっと故郷の田園で、自ら鍬を取って田を耕す生活を送った人です。 おのれの抱いていた信念の実現が、現実の社会で阻まれていることへの苛立ちから役人も辞め、やむを得ず田園生活を送ったのですが、その為終生つきまとって離れない貧乏との戦いにも気が休まることがありませんでした。 晩年には嘗て役人として仕えていた晋という国が滅びてしまう運命にも直面し、酒に憂さを晴らしつつの困窮した田園生活となりました。 「飲酒」と呼ばれる連作詩のその五に有名な詩があります。 廬(ろ)を結びて、人境にあり 而かも車馬の喧(かまびす)しき無し 君に問う、何ぞ能(よ)く爾(しか)るやと 心遠ければ、地も自ずから偏なり 菊を采(と)る東籬(とうり)の下(もと) 悠然として南山を見る 山気 日夕に佳く 飛鳥 相い与(とも)に還る 此の中に真意有り 弁ぜんと欲して已(すで)に言を忘する 明治時代に夏目漱石が小説「草枕」で超俗的な生き方として引用しています。が果たして・・? |